令和5年4月から公設民営という新しい運行形態でスタートした松本地域内の路線バス「ぐるっとまつもとバス」。
市がエリア全体の路線や便数を設計し、バス運行の効率化やキャッシュレス決済導入による利便性向上に向けて積極的な取り組みを行っています。その取り組みのひとつであるタッチ決済について、松本市役所交通部の三井 康弘様にお話を聞きました。

課題
・市の施策としてスピード感のあるキャッシュレス化を進めていく必要があったが、高額なコストが課題
・キャッシュレス化とともに、利用者のOD(origin&destination)データを取得する必要がある
・観光やビジネスで来訪する利用者でもスムーズに使えるキャッシュレス環境の構築が不可欠

対応策
・先行運用していたスマホアプリ「TicketQR」に加えて、aegise2.0 Transit Gatewayでクレジットカードのタッチ決済を導入

効果
・バス利用者のキャッシュレス決済比率が向上
・外国人を含む観光客利用時の利便性が改善され、バス乗務員のオペレーション負担が軽減
・取得した利用データを政策立案に活用

remise「ぐるっとまつもとバス」におけるクレジットカードのタッチ決済導入背景について教えてください。

松本市では、公共交通の利便性向上と持続可能性の確保を目的に、令和3年度から本格的にキャッシュレス化を推進してきました。交通のキャッシュレスというとSuicaをはじめとした交通系ICだと思いますが、これらはコストが非常にかかるということで、まずはスマホアプリ「TicketQR」※1による実証実験を開始しました。

というのも松本市では、キャッシュレス化を進めるにあたり利用者データの取得を重要視していたからです。交通部が発足した令和3年当時、上田市で実証実験を行っていた「TicketQR」が、我々の目指すもの ―カードベースチケッティングではなくアカウントベースの乗車サービスで、コストを抑えスピーディにキャッシュレスを実現できるもの― に近いということから、令和4年4月より中心市街地を運行する一部のバス路線で実証実験を開始し、キャッシュレス決済の有効性と課題を検証しました。

そして令和5年4月に「ぐるっとまつもとバス」がスタート。先行した実証実験で明らかになった課題を踏まえ、スマホアプリに加えて、より簡単な支払い手段を追加することになりました。これにはアプリのインストールや操作が利用者にとって負担となり、利用率が伸びなかったという背景があります。そこでバス利用者が日常的に使っている媒体を使ってストレスなく支払いができるプラスαの決済手段として、クレジットカードのタッチ決済を導入するに至りました。

remise実際にタッチ決済が導入されて、利用状況はどう変化しましたか。

キャッシュレス決済比率の推移では、令和5年11月に「TicketQR」が「ぐるっとまつもとバス」の全路線へ拡大した際の利用率が約3.5%でした。その後徐々に上がっていき、令和6年の1月時点で約6%。MTT方式※2のタッチ決済が運用開始となった令和6年11月以降は約9.25%まで上がっています。これは市として強力なプロモーションを行った成果もあると思いますが、やはり普段使いのカードでスムーズにバスに乗れるタッチ決済の利便性という点が大きいと思います。1日あたりのタッチ決済利用件数も倍増しており、順調に伸びている状況です。

remise今後の展望をお聞かせください。

公共交通を社会インフラとして持続可能なものにしていくために、キャッシュレス化により得られたデータを交通路線の効率化や政策立案に活用していく予定です。また、取得した乗降データは分野を超えた政策間連携、例えば観光振興にも活用できると考えています。

現在、「ぐるっとまつもとバス」で使える決済手段は「TicketQR」とクレジットカードのタッチ決済だけですが、将来的には交通系ICカードにも対応する予定です。※3決済手段の拡充により利便性が向上し、公共交通の利用が促進されることで、自家用車から公共交通への移行を後押しできればと考えています。その結果、渋滞の解消やCO2排出量の削減といった好循環が生まれることを期待しています。

remiseタッチ決済の今後に期待していることは?

公共路線なので地域住民の足としての利用がメインになりますが、観光で訪れる方にとっても普段使いのカードでスムーズにバスに乗れるタッチ決済がバス利用促進のカギになることを期待しています。外国人を含めた観光客の方にもタッチ決済を便利に利用してもらうことで、公共交通が観光需要を取り込み、さらなる維持活性化につながることを期待しています。

松本市は交通政策に特に力を入れており、独立した「交通部」を設けている全国でも珍しい自治体です。キャッシュレス決済の拡大については「ホップ(コード決済)、ステップ(タッチ決済)、ジャンプ(交通系IC決済)」を合言葉に、そのうちの「ステップ」段階でルミーズのサービスを導入していただきました。今後もタッチ決済を通じて地域全体の利便性向上に貢献し、松本市が目指す公共交通の将来像に向けて、決済面でのサポートができるよう技術力を磨いてまいります。

三井様、ご協力ありがとうございました!

※1 専用アプリのQRコードをリーダーにかざすだけで決済が可能なサービス。株式会社TicketQRが提供。

※2 Mobility&Transport Transaction方式の略。変動運賃制で、乗車・降車のそれぞれでタッチする。

※3 「ぐるっとまつもとバス」における「地域連携 IC カード」システムを利用したIC 乗車サービスの提供について(プレスリリース)

プロフィール

「ぐるっとまつもとバス」/松本市 様

設立 令和5年4月
路線数 30路線
バス台数 68台
URLhttps://www.city.matsumoto.nagano.jp/soshiki/222/50194.html
この事例の製品・ソリューション

aegise2.0 Transit Gateway

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